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エル・システマについて「世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ」

 引き続き、グスターボ・ドゥダメルにはまっております。

このドゥダメルを育てたベネズエラで発展した子どもと若者のためのオーケストラと合唱団のシステム「エル・システマ」がすばらしいので、それについて書かれた本を読んでみました。

「エル・システマ」は、ベネズエラのホセ・アントニオ・アブレウ博士が1975年にはじめました。

アブレウ博士は、作曲家、指揮者であるとともに、経済学者、国会議員でもあるというすごい人。一度の人生で、それだけいろいろなことができることが驚きですが、そのすべてがあるからこそ「エル・システマ」を生み出すことができたのでしょう。

その功績から、2001年に第二のノーベル賞といわれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞し、ユネスコの平和大使を授与されています。

 

<エル・システマの成り立ち>

アブレウ博士は、音大時代、一人で演奏することに壁を感じ、誰かと演奏する機会を求めて仲間を募り、学生オーケストラをはじめました。自主的に演奏会をするうち、ベネズエラ人が素晴らしい演奏ができることを多くの人が知ることになりました。

(ちょっとSオケと重なりますね)

 

それから数年後、この試みを広げて、きちんとした形にするため、ユース・オーケストラをつくることにし、ガレージを練習場所に、メンバーを集めました。

最初に集まったメンバーは11人。

ここから徐々にメンバーが増えて、ボランティアが支えるオーケストラが誕生しました。

(こちらは、ライジングスターオケっぽいですね)

 

その後、積極的に演奏会を行い、それを見て指導してくれる指揮者が現れ、国際音楽祭で高い評価を得て世界から注目されるようになった機会に、政府からの支援を得ることに成功します。

このとき支援を得た名目が「音楽を活用した青少年育成プログラム」。

国を挙げて貧困問題と闘うためのプログラムとして承認されました。

 

<エル・システマの概要>

このプログラムでは、貧困層の子どもたちに、無償で楽器を提供し、演奏を教え、食事や制服も提供しています。

楽器の演奏を学びながらオーケストラとして演奏していく中で、子どもたちは、感性が豊かになり、自律、仲間と協力することを学び、自信や希望を持つようになっていきます。

成長し、プロのオーケストラとして活動したり、指導者になる人も多くいます。

ドゥダメル以外にも、国際的な舞台で活躍している、指揮者や演奏家も出ています。

また、音楽の道に進まなくても、ここで身に着けた生きていく姿勢は、子どもたちを貧困から救い、よりよく生きていくことに役立っています。

 

<エル・システマから学ぶ大切なこと>

・まず、発表する機会を設ける。

 アブレウ博士は、オーケストラをつくったとき、それがまだぜんぜん下手でも、すぐに発表する機会を設けます。

すると、そのために短期間でみんながどんどん力をつけていくんです。

 そして、次から次へと発表する機会を設けることで、みんながどんどん成長していきます。

これって、「みんなの前で恥をかかせたくない」と思うとできないことですから、この子たちならやれる、という信頼が必要。ここにすごく信頼があるからできることなんだと思いました。

 

・初心者とベテランを同じオーケストラに入れる

楽器をはじめたばかりの子もその日からオーケストラのメンバーに入れます。

その子が演奏できる楽譜を用意して、最初からみんなと一緒に演奏できるようにすることで、みんなの一員だという喜びやプライドも持てるし、同じパート同士で教えあうことが当たり前になるそうです。

こういう環境が当たり前にあると、仲間の中で競争したり、誰かを蹴落としたりという発想にならないみたいです。

それが、シモン・ボリバルオーケストラの楽しくのびのびした雰囲気にもつながっているんでしょうね。

 

・その人に合う仕事があれば、ドーンと任せる。

 アブレウ博士は、才能を見抜く達人のようで、この人は!と思うとどんどんチャンスを与えていきます。

おかげでドゥダメルは、12歳で指揮者として活躍するようになったんですね。

ほかにも、路上生活をしていた非行少年をオーケストラに入れ、奨学金を与えてドイツでオルガン製作の技術を学ばせ、帰国して新しく建設する音楽センターのパイプオルガン製作の責任者に抜擢したとか、そういった話はたくさんあるそうです。

抜擢された人はみんなアブレウ博士に頼まれたら断れない、と言うそうです。

そればアブレウ博士の人徳であり、これまでに積み上げてきたものなんでしょうね。

 

<印象に残った言葉>

 「合奏には他者への思いやりと協同という概念が必要なので、人として成長することにつながる。つまりオーケストラというのはコミュニティーなのです。みんなでハーモニーをつくりだす、ひとつの小さな世界なのです。これが芸術的な感性と結びつけば、どんなことも可能になる」

グスターボ・ドゥダメル

 

「貧困は人の個性を失わせる」

「オーケストラが子どもたちに与える意義は、喜びであり、モチベーションであり、チームワークであり、成功である。音楽は社会に幸せと希望をもたらす」

「音楽から生まれるとてつもなく大きな精神世界は、物質的な貧困を打破する」

「なにかをシステムとして定義したら、その日からその命は消えてしまう」

「恵まれない子どもたちにこそ、最高の楽器と最高の先生、そして最高の設備を提供しなければなりません」

ホセ・アントニオ・アブレウ

 

「どんなに頭がよく、才能があっても、生徒はまだ子どもです。だから間違いを正すのは大人の責任です」

ーエドゥアルド・メンデス(シモン・ボリバル音楽財団)

 

ほかにもいっぱいあるのですが、これくらいに。